お金を貯めよう

カニバリズム小論(法月林太郎の冒険から)

探偵小説にはwho done it?(誰がやったか)を追求する物語が多いと思いますが、本作品はWhy done it?(何故やったか)を追い求める物語です。医学生が恋人を殺した事件に関しての物語ですが、犯人も逮捕されており、特徴のあるトリックもありません。ただ、犯人の医学生が殺した恋人を食べており、この食人という行為の理由をめぐって、主人公と友人の探偵が議論を展開するという内容になっております。

食人という行為の文化的側面などを踏まえて淡々と議論していくので、読んでいていて不快になることもありませんし、作者の圧倒的な知識量に感嘆してしまいます。

物語は主人公が自身の食人に対する知識や研究をもって事件の食人の理由に迫りますが、なかなか核心には近付けません。果たして探偵が用意した答えとは何だったのでしょうか。また、探偵は何故主人公に答えを出させようとしたのか。終始why(何故)に焦点を当てており、読みながら自分でも推理しているような感覚になります。そして物語の最後に待っている結末にきっと驚くでしょう。食人というテーマではありますが、読了感には不思議な爽やかさがあります。

短編なのでこれだけの知識と謎と驚きの結末を30分程度で読めてしまいます。他の収録作品も読みごたえのあるものばかりですので、非常にお勧めの一冊です。